重症化予防のための足病診療ガイドライン

重症化予防のための足病診療ガイドライン』をホームページにて公開いたしました。

以下、ガイドライン巻頭言より


このたび,ついに日本フットケア・足病医学会から「ガイドライン」が上梓されたことはたいへん喜ばしいことです.本ガイドラインの作成は,当初学会の前身である日本下肢救済・足病学会の時代から始まりました.2017年の前身ガイドライン委員会の始動は,時の国是でもある「足病重症化予防」のためのガイドラインの作成開始でもありました.2019年に日本フットケア学会と合併し,まさに多職種から構成されるメンバーへと拡大し,合併後の最大事業となりました.そういった意味においても感慨深いものがあります.

日本フットケア・足病医学会の特徴と意義

本学会は,多職種・多診療科から構成される烏合の衆ですが,「患者さんの歩行を守り,生活を護る」ために結集されたメンバーの集合体でもあります.日本は高齢化社会を迎え,糖尿病,動脈硬化症,透析を代表とする慢性腎臓病のほか慢性静脈不全症や各種膠原病などの疾患をベースとした「足病」を患う患者が増加の一途であることから,日本の将来の「足」を守ることが日本の社会を守ることでもあると考えています.学会発足後の筆者の所信表明(Inaugural address)のなかのひとつに「日本版足病医学を学会主導で確立する」とあります.本来「足病医学」は西洋社会だけのものであり,東洋社会には存在しません.しかし,経験上,西洋社会とは異なる「足病」患者の急増のために,日本が主導的立場になり東洋型足病治療の促進を担う必要性があります.本ガイドラインは,まさにそのための根幹とならなければならないと考えています.

足病の定義

上記のために,本学会が作るガイドラインには,まず「足病の定義」が必要でした.これまでに「足病の定義」が明記されたものはありません.そこで今回,足病を「起立・歩行に影響する下肢・足の形態的,機能的障害(循環障害,神経障害)や感染とそれに付随する足病変に加え,日常生活を脅かす非健康的な管理されていない下肢・足」と定義しました.

本学会からのガイドラインの意義

上記定義に基づいて,患者の歩行と生活のためのCQを集めたところが,他の診療ガイドラインと大きく異なると考えています.たとえば,糖尿病の治療のための,動脈硬化改善のための,透析治療における,などのガイドラインは各診療科での診断と治療を目的としています.本ガイドラインでは,あくまでも足病からいかに「患者さんの歩行を守り,生活を護る」か,に焦点を当てています.したがいまして,足病の発症と重症化予防,歩行,多職種連携,地域連携などがテーマとしてあがってきます.そして,それぞれのCQに応じるために多職種,多診療科が必要となってまいります.まさに患者側に立脚したガイドラインといえます.

このように,多くの時間と労力を要した世界に類を見ない本学会のガイドラインですが,それぞれの執筆者の熱意に溢れた内容となったことを反映して,学会員からのパブリックコメントもまた熱いメッセージといっしょに返されました.したがいまして,学会全体の総意に基づくガイドラインが上梓されたとも捉えることができるのではないでしょうか.

最後に,本ガイドラインの策定と作成に携わった各位に感謝の言葉しかございません.本学会を代表して心よりお礼を申し上げます.本ガイドラインが,多くの日本人の足を守り,歩行を守り,生活を護ることにつながりますよう願ってやみません.


日本フットケア・足病医学会 理事長
寺師 浩人


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