本当は怖い足の血流の話
コラムリレー 第4回/全23回
公開日:2025/12/10
末梢動脈疾患(PAD)は、足の動脈が狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなる病気です。これは動脈硬化が原因で起こります。動脈硬化とは、動脈の壁にコレステロールなどの脂肪がたまり、血管が狭くなるもしくは詰まってしまう状態です。
初期症状としては、足が冷たく感じたり、歩行時に痛みを感じることがあります。この痛みは「間歇性跛行」と呼ばれ、歩行中に痛みが生じ、休むと痛みが和らぐ特徴があります。さらに進行すると、安静時にも痛みが続き、足の傷が治りにくくなり、最悪の場合足の切断が必要になることもあります。
喫煙や糖尿病、高血圧、高脂血症などが動脈硬化のリスク因子となります。これらのリスク因子を持っている方は、末梢動脈疾患の予防のために生活習慣の改善が重要です。例えば、禁煙、適度な運動、バランスの取れた食事などが効果的です。
簡単にPADを見つける方法として、足の甲にある動脈を触れてみることが有効です。正常であれば足の甲の中央部分からやや内側に脈を触れることができます。左右ともにどくんどくんと脈を触れることができればPADをさほど心配する必要はありません。しかしながら、脈が触れない、弱い場合や足が冷たい、痛い、色が悪いなど血流を心配するような症状がある場合には専門医を受診することをお勧めします。
診断は比較的簡単で両手両足で血圧測定を動じに行う脈波検査を行います。手の血圧に比べて足首の血圧が低い場合にはPADと診断できます。その後はどこの血管がどの程度詰まっているのかを調べるためにエコー検査やCT・MRI検査を行っていきます。
症状が強い場合には治療が必要になります。まずはお薬の治療、そして運動療法を行います。運動は足が少し痛いと感じる程度の運動を週に3回以上行うことが推奨されています。しかしそれでも症状が改善しない場合や指先が壊死・壊疽に陥ってしまうような場合には、詰まってしまっている血流を改善するためにカテーテル治療かバイパス術を行います。どちらを行うかはどの程度詰まっているのかということや、年齢を含めた全身的な状態で判断されます。
図にあるのは詰まってしまった太ももの動脈(大腿動脈)に対してカテーテル治療を行ったものです。
PADは脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化が原因で起こる病気ですが、それらに比べてあまり重要視されません。軽視されたり見逃されてしまうことも良くあります。重症化すれば足の壊疽から切断につながる恐ろしい病気ですが、早期に発見できれば治療も十分可能です。足を救うために足が冷たい、痛いといった症状を軽視せず血流をチェックし、早めに検査するようにしましょう。

文責:宇都宮 誠