靴の選び方
コラムリレー 第1回/全23回
公開日:2025/10/22
「先生、どこの靴がおススメですか?」 足の専門病院の外来でよく聞かれる質問です。
「どこのメーカーやどこのブランドがいい、ということはなく、あなたに合った靴が一番いい靴なんですよ」と答えるとみんながっかりした顔をします。
誰かがテレビや口コミで「足にいい」といっている靴は、他の人にぴったりあうかもしれませんが、あなたにぴったりだとは限りません。身長が一緒なら同じ服がみんなに似合うでしょうか?もちろんそんなことはありません。人によって足の形は異なり、しかも年齢によって変化していきます。誰かがいいといった靴をサイズだけ合わせたとしても自分の足に合うとは限らないのです。
さらに、靴のメーカーによってあなたに合った靴のサイズは異なります。「私はいつも○○cmだから」と靴を探す方が多いかもしれませんが、靴の内側に書かれているサイズを基準に靴を選んではいけません。同じ24cmと表記された靴でも「定規ではかったら靴自体の長さが24cmの靴」であったり、「24cmの足の長さの人が履いてちょうどいい靴(つまり実際には26cmぐらい)」であったりとメーカーによってはまったく意味が違う場合があるのです。
そもそもあなたの足のサイズは大人になってからも変化しています。ほとんどの人は私たちの足の長さや幅が年齢とともに変化し続けることを知りません。足は33の関節、26の骨、100以上の靭帯の組み合わせによって出来ていて、骨の長さが変わらなかったとしてもその並び方や配列が変化することで足の長さや幅が変化するのです。
自分のサイズを決めつけることなく、実際に履いてみて、靴が足にフィットするかをしっかり確認した上で購入することはあなたが思っているより大切なことです。
靴を購入する際のコツ
①靴を選ぶ時間帯
よく言われることですが、靴を買うのは1日の終わりにしましょう。夕方になると足がもっとも大きくむくむため、午前中に靴を選ぶと小さすぎる靴を買ってしまうことになります。靴を選ぶ時には店内をよく歩き回って、つま先に十分なスペースがあり、つま先が靴にあたらないことを確認してください。これによってより正確に自分の足に合っているかを見極めることができます。
②適切な靴のフィッティング
- 見た目の形(あなたの足の形と同じ形の靴を選ぶ)
親指が一番長い方は親指が長くなった靴を、2番目の指が一番長い方は真ん中が長くなった靴を選びましょう。外反母趾の方は親指の出っ張った部分の幅が広い靴を、踵の小さい方は踵の狭い靴を選びましょう。見た目の形が足の形と合っていなければ、必ず靴の中で靴と足が衝突します。あなたの足の形と同じ見た目の靴を選ぶのはもっとも簡単で確実な選び方です。 - まず履いてみる
ぴったりとフィットしすぎる靴ではなく、あなたが立っているとき、靴の中であなたの最も長い指の前に十分なスペース(横にした指1本分の幅)があることを確認してください。歩くと靴の中で足は前後にずれるため、立った状態でぴったりした靴を選んでしまうと、歩いているうちに前につっかえてしまいます。 - 歩いてみる
靴を履いた状態で歩き回って、ぴったりとフィットすることを確認します。初めて履いた時から快適な靴を探してください。「最初は合わなくてもそのうち伸びたり曲がったりしてあなたの足に合うようになるだろう」と期待しすぎないようにしましょう。大きすぎる靴や、踵がカパカパするような靴は購入しないでください。厚い靴下を履けばいいや、と大き目の靴を選んでもいけません。 - 定期的に買い替える
靴は履いているうちにへたってきたりすり減ってきたりします。どんなに気に入った靴でも6か月~1年で新しいものに交換しましょう。
最近はインターネットで靴を買う方も多いようです。見た目が気に入るのは大切ですが、実際に履いてみると履き心地が気に入らないこともあるんじゃないでしょうか?
みなさんにはささいなことのように思えるかもしれませんが、正しくフィットした靴を選んで履くことは健康に直結します。合わない靴を履き続けると、外反母趾や足のタコ、ウオノメが出来たり、疲労骨折の元になったり、血行が悪くなったりと、様々なトラブルに繋がるのです。しかも足は私たちの身体を一番下で支えているため、足に問題があると全身のバランスが崩れ、腰や肩、全身にまで痛みが出る可能性すらあるのです。そして、そのほとんどは間違った靴選びによって引き起こされると言っても過言でありません。
足や全身の健康を維持しケガを防ぐためには、正しい靴選びがとても大切です。そのためには実際に何足も履いて確かめるしかありません。なかなか合った靴に出会えず苦労するかもしれません。でもとうとう出会えた履き心地のいい靴は、あなたの日々の生活を快適に、楽しいものにしてくれるでしょう。
さぁ、あなたを元気にしてくれる、履き心地のいいおしゃれな靴を探しに行きましょう!

文責:菊池 守